日本独特の髪型という意味にとれば日本髪の歴史は相当古い。恐らく卑弥呼の時代まで遡ることができるであろう。かつらもその時代から宗教儀式における各種イベント、踊り、芝居などで使われていたであろう事は想像に難くない。
しかし、結婚式において花嫁が使用している和装かつら「文金高島田」の歴史はそれに比べればかなり浅い。男がちょんまげと決別したのは明治維新の断髪令からだが、女が日本髪の呪縛から完全に解き放たれるのはようやく戦後になってからのようだ。古い美容師の経験談によれば、昭和初期は自髪で高島田を結って嫁入りするのがまだ常識であり、もし高島田を結えないとなると髪の毛や性格に異常があるのではないかと疑われてもしかたがなかったそうです。その頃日本髪が結えないくらい短く髪を切ってしまった新婦(時代に逆らう進歩的お嬢様だったか)がいて、新郎側の一族にばれないようかつらでごまかすのに大変苦労したそうだ。
従って結婚式における花嫁の和装かつらは初期においてはいかに自然にみせるかに開発の重点が置かれていた。しかし、自髪で結えないのが当たり前になった現代においてはむしろ自然さより、いかに美しく見えるかが重要になった。日本髪の美を追求してきた結果が現在のはえぎわのラインである。あのように形の良い富士額、長いもみあげは現実にはありえないが、日本髪の理想的な形なのである。結い上げにおいても今では下すきから仕上げまでゆうに10時間かけて一糸乱れぬ美しい櫛目を作り上げている。自髪の日本髪ではとうてい考えられない所要時間である。日本髪の究極の美が、現代の和装かつらによって完成したといえるのではないだろうか。 |